ドキュメンタリー企業小説「頂きにのびる山路」

あわわの師さんが執筆するドキュメンタリー企業小説「頂きにのびる山路」を連載で掲載します。

この小説は、フィクションであり、登場する企業や個人は、実在するいかなる企業や人物とも、関係がありません。
また、この小説に登場する、ビジネスや金融に関する手法に関して、その採用をされるのは自由ですが、それは読者の皆さまの自己責任で採用頂くものであり、その結果の成功を、このサイトの主催会社及び著者は、なんら保証するものではありません。

起業編

第1話「出会い」
渋谷・宮益坂の緩い傾斜を登っただけでも、9月の東京の熱気で、スーツの内側に汗がべっとりと纏わりつく。ワイシャツの襟元に汗が溢れる。
午後の時間、こうして都心の路をしばらく歩いていたら、ネクタイの結び目が、汗を吸って、コンクリートのように凝固するだろう。今夜は、これを解くのに一苦労するに違いない。…
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第2話「人材紹介」
株式会社バリューフェス・キャリア代表取締役 阿部洋次は、求職をしてきた山之辺伸弥に渡すため、2枚の求人票を手元に持っていた。阿部は、2枚の求人票のうち、1枚目を山之辺に手渡した。
「山之辺さん。あなたに、弊社が掲載している非公開の求人に応募いただきました。その案件が、この求人票の会社です。」
非公開の求人とは、求人企業が、自社が求人募集をかけていることを求職者一般に情報開示せず、特定の人材紹介会社だけに求人を依頼する求人手法のことである。…
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第3話「面接(前編)」
山之辺伸弥が阿部と会った翌日。
人材紹介会社である株式会社バリューフェス・キャリアの溝口香里から、山之辺は、美月林業取締役人事部長との面接設定ができた旨の連絡を受けた。
そして、約束の日、新宿駅南口の指定された待ち合わせ場所に向かった。
その日も、まだ照り付ける太陽がまぶしかった。
約束の時間15分前ではあったが、株式会社バリューフェス・キャリアの阿部洋次社長は、既に、照り付ける太陽の下で、山之辺を待っていた。…
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第4話「面接(後編)」
これまで、美月林業の人事面接が、取締役会議室で行われたのは、旧美月財閥系の銀行から送り込まれる、役員待遇で入社する人物の入社面接に限られていた。美月林業取締役人事部長の神崎健一は、その役員会議室の重厚な椅子に、株式会社バリューフェス・キャリアから紹介されてきた、一介の営業マンに過ぎない山之辺伸弥を前に、満面の笑みを作って座った。
山之辺の隣には、株式会社バリューフェス・キャリア代表取締役の阿部洋次が、無表情で影のように、豊かな椅子に深く腰をかけて座っている。
山之辺は、立ち上がり、丁重に神崎に挨拶をした。
「この度は、神崎取締役に直接お時間を賜り、大変光栄に存じます。山之辺伸弥と申します。よろしくお願いいたします。」
丁重な言葉遣い。しかし・・・。笑みを浮かべた目の奥は、全く笑っていない、神崎はそう感じた。…
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第5話「密会(前編)」
美月林業の神崎健一人事部長による、山之辺伸弥の面接から1ヶ月後。東京は、秋の気配が感じられる季節になっていた。
喧噪が埋め尽くす新宿歌舞伎町に建つビル。ここに押し寄せてくる外国人観光客や酔っ払いを寄せ付けないかのように、一見の客が入れない門構えを見せつける建物の奥。そこにあるエレベーターで、4階まで登ったところにある、料亭 薫林坊総本店。
株式会社バリューフェス取締役の阿部洋次は、その夜、同社営業システム部長・執行役員の水谷隼人を、この料亭に招いていた。
4階のエレベーターを降りると、下界の歌舞伎町の喧噪が嘘のように消え、琴の演奏曲が流れる静寂の空間が出現する。
阿部が予約した個室には、江戸時代を代表する名画家 谷文晁の掛け軸が床にかけられていた。
几帳面な水谷は、約束の15分前にここに到着し、株式会社バリューフェスの上席でもある阿部を、予約された部屋で、律義にお茶をすすりながら、待っていた。…
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第6話「密会(後編)」
阿部洋二取締役は、決して酒が強いほうではない。大井川秀樹が役員全員を連れ、お忍びで主催する銀座の高級クラブの役員の懇親会で、大井川を前に、阿部がホステスの肩にもたれかかって、いびきをかいて爆睡したという、冷や汗もののレジェンドすら、水谷隼人執行役員は耳にしたことがあった。
そのため、酒席で仕事の話をする場合、阿部は、酒が回らないうちに、用件を早々に切り出す癖があった。
しかし、今日は何故か、違った。阿部は、本題を避けるように、1時間ほど、世間話を続けた。阿部自身は、殆ど酒杯に手を伸ばさず、水谷の酒杯に盛んに酒を注ぐ。
料理が鍋に進み、若い和服姿の中居が鍋の支度を終えて下がると、阿部は、水谷の酔いの程度を探るように水谷を見据え、そして居住まいを直した。それまでの目線とは違った鋭い視線を水谷に向け、声を落とした。…
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第7話「Departures」
株式会社バリューフェス・キャリアの社長室。
阿部洋次社長は窓際に立ち、そこから遠景に見える、新宿の高層ビル群を睨みつけていた。渋谷から観る新宿の高層ビル群は、西側から、暮れかかった日の光を浴びていた。別室には、来社した山之辺伸弥を待たせてある。
阿部洋次が、山之辺伸弥を営業担当の人材として紹介した、住宅メーカー大手の美月林業からは、山之辺を本人の希望通りの年俸で、現場営業職として、何としても採用したいという打診が、阿部に来ていた。
仮に、山之辺が、数千万円の年俸を提示し、阿部がバリューフェス・キャリアの紹介報酬を、その年俸の40%という、人材紹介手数料相場の最高率で交渉したとしても、美月林業は、喜んでその条件を呑むだろう。
しかし、阿部は、山之辺を美月林業に渡すつもりはなかった。…
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第8話「決断の要因」
阿部洋次は、株式会社バリューフェス・キャリアの入る、青山のビルの前でタクシーを拾うと、山之辺伸弥を連れて、銀座に向かった。
今、終わったばかりの、阿部と山之辺のミーティング。山之辺は、美月林業ではなく、バリューフェスを次の転職先に選び、阿部の率いる新規事業部門で、働くことを決断した。
阿部は、どうやって、山之辺を決断させたのであろうか?この時点から、時を遡ること、2時間半。
山之辺は、溝口香里に案内されて、株式会社バリューフェス・キャリアの、阿部社長の社長室に入室した。…
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第9話「副業の構想」
料亭「鳥金」は、名古屋コーチンの名店として、名古屋の錦に本店と料亭店舗を構える老舗だ。その東京銀座店に、阿部洋次は、山之辺伸弥を伴って入った。
「ここの名古屋コーチンの鍋は、最高に美味いんだよ。僕は、名古屋支社の支社長を3年間、やっていたんだ。ここの、味噌味の鍋が、たまらなく好きでね。名古屋赴任中、よく単身で、ここの本店カウンターに座り込んで、この鍋をつついていたもんです。」
阿部は、席に着く前に、山之辺にそう語った。半個室の席には、来客の用意が3名分、整っている。阿部と山之辺の2人は、席に座ると、阿部のお勧めの鍋を始めずに、名古屋コーチンの刺身を肴に、獺祭の冷酒で、まずは乾杯した。…
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陰謀
第10話「陰謀」
表参道のインテリジェンスビルに入る、株式会社バリューフェス本社。その奥には、大井川秀樹の使う社長室と並んで、それより少し狭い副社長室が鎮座する。副社長の坂田将は、大阪出張に出かける前に、社用車を待たせて、総務部長の加藤仁一を、副社長室に呼んだ。
加藤は神経質そうな小さい顔に、細い眼鏡をかけていた。そして、加藤とは対照的に、頑丈な体格をして、どっしりと深く役員席に座っている坂田に対し、机の前に直立不動の姿勢で立ちながら、業務報告を行った。加藤は、坂田の腹心の部長である。総務部は、人事・経理・財務・IR・法務の、すべての管理部門の領域の業務をカバーしていた。加藤は、その意味で、バリューフェスの頭脳の機能を担当していた。…
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韓国クラウドビジネス編

韓国クラウドビジネス編スタートアップ
第1話「スタートアップ」
表参道を歩くビジネスマンも、殆どがスーツ姿となり、固くネクタイを締める季節となっていた。その表参道のインテリジェンスビルの最上階に入る、株式会社バリューフェスの本社。既に、大井川社長が使用する社長室の入口に、新たな業務スペースが設けられ、真新しい机と椅子が配置されていた。
天井から下がった部署を示す掲示には、「社長室 コンサルティング・デビジョン」と記載されている。バリューフェス・キャリアから移動されてきた役員が使用する、阿部洋次の机の前には、2つの机の島が、今日からの稼働に備えて配備されている。
一つの島には、「経営コンサルティング・セクション」と看板に記載され、もう一つの島は、「海外進出コンサルティング・セクション」と表示されている。…
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