名古屋発貸会議室企業の社長が取り組む、中国優良企業との提携戦略

KCC株式会社
オックスフォードエコノミクスの調査で、東京や大阪を抜き、日本の都市で最も高い成長率を近未来に予想されている、名古屋。この名古屋をベースに、レンタルオフィス・貸し会議室の、企画・管理・運営事業を行っているのがKCC株式会社である。日本リージャスや、TKPなど、レンタルオフィス・貸し会議室業界には、飛躍的な発展を遂げる企業が多数現れている。この業界は、これらの大手が豊富な資金を投資し、しのぎを削るレッドオーシャンマーケットといえる。
しかし、その中でも、KCC株式会社は、独自に物件を保有・賃借せず、ビルオーナーの事業企画と運用受託を行う、資産運用受託会社という独自の事業モデルで安定した成長を続ける、特異な存在だ。
この独自のビジネスモデルを編み出したのが、創業者である遠藤陽介社長。
競争の激しい、この業界にあって、事業ライフサイクルの初期段階から、一貫してレンタルオフィスと貸し会議室事業に取り組んでこられた遠藤社長が、中国企業との提携の模索をはじめられたのは、約3年前。日本企業が中国エリアで会議を行うための総合サイト「台湾会議室」「上海会議室」「香港会議室」を相次いで開業。これまでに中国主力都市3拠点での、貸し会議室ビジネスに進出されたことになる。中国の優良なレンタルオフィス企業と相次いで提携を進める遠藤社長に、中国企業とのビジネス提携のご経験談と、将来性をお聞きする。

あわわの師さん本日は、KCC株式会社の遠藤陽介社長にお時間をいただき、お話をお伺いいたします。
ご多忙のところ、お時間をいただき、ありがとうございます。

遠藤社長:いえいえ。こちらこそ、わざわざ、東京から名古屋に取材にお越しいただき、恐縮しております。

利用者から観た、海外貸し会議室の仕組み

あわわの師さん早速ですが、この度のインタビューをさせていただくにあたり、私、香港への出張時に、KCCの「香港会議室」を、弊社の会議で使用させていただきました。

遠藤社長:その節はご利用をいただき、ありがとうございました。

あわわの師さんレンタルオフィス事業を営まれる香港企業様の入居企業向け会議室を、日本企業向けに提供をされておられるわけですね。
使わせていただいて思ったのですが、サイトもすべて日本語で、問い合わせもKCCのコールセンターに日本語で出来ますね。支払いも、日本円で国内決済でき、これでバウチャーが発行されます。それを現地で提示するだけ。プロジェクターや飲み物までが、完全パッケージ化された貸し会議室の「使いたいツール」すべてが、中国語で会話することなく、使うことができました。びっくりしました。これなら、香港で使われている広東語が聞き取れない日本人でも、何も問題なく、香港で会議室を使えますね。
私が使用させていただいたのは、中環(セントラル)の一等地の名門ビルの会議室で、非常に便利でした。それに時間単価も、香港の超一等地にしては、そんなに高くありませんでした。ビジネスマンには、とても良いサービスですね。この方式は、台湾や上海でも、同じですか?

遠藤社長:ありがとうございます。私がご説明する前に、システムをお話いただいてしまいましたね(笑)。

台湾では、台北全域はもちろん、第二の都市である高雄にも会議室を開設しました。また上海でも、上海全域に会議室を使っていただけます。香港も、今回ご使用いただいた中環は、まさに、香港島の金融中心街ですが、香港島と大陸側全体に、会議室をご使用いただけます。あわせた会議室総数は、オール中国エリアで、52室(上海18室、台湾26室、香港8室)まで来ました。システムは、お話いただいた通りで、各都市ともに同じです。

あわわの師さん中国は、日本人が「中国語」と呼んでいる普通語(プートンホア。“北京語”の意味)で会話してくれない人もいます。最近では、香港人ですら、英語で話しかけても、引いてしまう方が多くなりました。そういう意味で、中国のどこの地域でも、サービスが受けられる仕組みは、とても画期的ですね。

遠藤社長:ありがとうございます。

東京よりも、中国に勝機あり

名古屋プライムセントラルタワー

※KCC株式会社が入る名古屋プライムセントラルタワー

あわわの師さんさて、御社は、日本国内で、名古屋を中心に事業を展開されておられる企業ですよね。
拝見しましたところ、失礼ながら東京があまり、強くないように感じました。
普通でしたら、東京を徹底的に強化されるのが先だと思うのですが、なぜ、東京を通り越して、中国に目をつけられたのですか?

遠藤社長:ご存知の通り、貸し会議室ビジネスでは、東京は、猛烈な主戦場になっています。TKPさんをはじめとする大企業が、資金力を背景に物件を大きく展開されています。
中小の貸し会議室屋さんも、スペースマーケットさんなどの、貸し会議室サイト各社がしのぎを削って、物件登録を進められています。

この競争は、まさに、レッドオーシャンな環境にあるわけで、ここで勝つためには、相当な資本力と体力が必要になります。

私は、この貸し会議室とレンタルオフィス業界を、20代の創業時から観てきました。
その中で、多くの資金力が乏しい業者さんが淘汰されてきたのを目の当たりにしてきました。

あわわの師さんなるほど。
ということは、中国は、御社にとって、逆にブルーオーシャン戦略の地だったのですね。

遠藤社長:その通りです。
企業経営では、急成長をすることよりも、継続して生き延びることが、最後に勝利する条件です。
その意味で、私は、レッドオーシャンの東京マーケットに、あまり力を注ぐべきではないと考えてきました。だから、成長ポテンシャルのあった名古屋に絞り、ここで勝つことに専念してきたのです。

一方で、中国は、これからのマーケットです。

あわわの師さん実際に進出されてみて、中国マーケットはいかがですか?

遠藤社長:私も、この数年間、台湾・上海・香港に幾度となく通い、中国市場を視察し、中国企業様と商談を続けてきました。各国の企業様は、私ども日本企業の持つホスピタリティに感動されます。一方、私どもは、中国企業の持つ合理的な成長志向を会社として学ばせていただきました。

そういった意味で、中国は、東京よりも面白いと思います。長期的なスパンで見た勝機は東京よりも高いと思っております。

企業文化の差異

あわわの師さん具体的に中国企業と商談をされた際、日本企業との企業文化の差異で、困惑されたことなど、ありますか?

遠藤社長:台湾の企業様と商談をしていた際、こんなことがありました。台湾の先方の企業様に訪問し、お客様からの申し込みをどのように実務的に処理をするかというオペレーションの打合せをしていた時のことです。

弊社から出した帳票類を観て、台湾企業様の社員の方々が、みんなで顔見合わせて、困惑されている様子です。通訳の方が、説明をしてくださったのですが、弊社の帳票が、各部署の責任者や担当者の捺印を押す形式の書類だったのです。台湾企業様から指摘されました。

「こんなに何人もの担当者の承認が何故必要なのですか?こんなことをしていたのでは、スピードが遅くなります」と。

まさに、日本では当たり前の書類形式が、中国企業には遅延の原因と把握され、各部署の責任者の承認をとる「持ち回り」が中国では全く通用しないのだということを学びました。

これは一例ですが、私もこのようなよい勉強をたくさんしました。

今後の企業の成長ベクトル

遠藤社長

あわわの師さんさて、今後、御社は海外進出をどのような方向でお進めになるご計画ですか?

遠藤社長:今は、まだ、弊社側の体制が追い付かず、日本企業への中国の会議室提供というステージで、まず事業をスタートしました。

一方で、中国の提携企業様からは、中国の企業様を、日本のレンタルオフィスや貸し会議室利用で受け入れてほしいとのご要望も強くいただいており、今後は、各企業様とその商談を更に進め、お互いに事業の拡大を図って行きたいと思います。

特に、レンタルオフィスでは、このようなインバウンドを進めることで、日本のユーザー企業に、中国企業との提携のチャンスをご提供する場を作ることもできると思います。

また、中国のほかのエリア・例えば北京とか、あるいは、中国以外のエリア・例えば韓国やASEAN加盟各国などに、レンタルオフィスの独自展開を進めることも視野に入れたいと思います。

あわわの師さんなるほど。
レンタルオフィスや貸し会議室は、世界に共通するサービスですから、御社が日本で培われたホスピタリティを海外に輸出されることで、海外にはない顧客目線に立った事業をグローバルに発展させることができますね。
今後のご発展、期待しております。
本日は、お忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。

遠藤社長:こちらこそ、ありがとうございました。お気をつけて東京にお帰りください。

【インタビューを終えて】

中国というブルーオーシャンを目指す先見性

レンタルオフィスという事業は、ある意味、参入障壁の低いビジネスだ。事実、私も、ビジネス交流会で、「レンタルオフィスとコーワーキングオフィスをやってます」という社長によくお会いする。

しかし、お世辞にも、経営者として観た時に思慮深い社長はあまりいない。

遠藤社長とお目にかかる前、私はそんな方を想像していた。

しかし、遠藤社長は、違った。

20代の初頭から、自分の独力で20年近く、レンタルオフィスと貸し会議室だけで、事業を一貫して進めてこられた、実に粘り強い事業家だった。そんな遠藤社長には、私以上に、この業界の軽薄さがよく見えるのだろう。

東京は、レッドオーシャンのマーケットだと言われるその言葉の裏に、自分と自分の会社の実力を、冷静に分析する冷静な経営者の視線を私は感じた。そのうえで、どこで戦うべきかを冷静に計算されている。そして、その遠藤社長が将来を見据えて出した結論が、中国をはじめとする海外への進出だった。

中国市場は、GDPでは急速に成長している。しかし、一方でサービス業やホスピタリティというソリューションでは、まだまだ中国企業は未熟だ。名古屋で20年間磨き上げてきたKCCのホスピタリティを発揮すれば、まだまだ中国は、競争者になりえる企業は少ないだろう。中国企業も日本企業のノウハウを求めて提携に積極的になるだろう。

今、その第一段階として、遠藤社長は自分自身の足で、中国を訪問し、中国企業と通訳を通して商談し、中国企業から学んでいる。

まさに、これこそがベンチャースピリットだ。

KCC株式会社運営 貸し会議室ポータルサイト「日本会議室」URL

https://www.nipponkaigishitsu.com

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