中国マーケットと中国企業 攻略の際の法的注意点

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
TandemSprint,Inc.代表取締役 小野智博先生

慶応義塾大学環境情報学部を卒業。行政書士として、外国人へのビザ申請や契約書に関する法務実務経験を積んだ後、青山学院法科大学院に入学。卒業後、司法試験合格。司法研修生をえて、弁護士登録。国内の渉外法律事務所から、カリフォルニア州のローファームに赴任。
2017年、カリフォルニア州に日本企業のアメリカ進出とアメリカ企業の日本進出を支援する、TandemSprint,Inc.の代表取締役に就任。
2018年、弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所開設。現在、代表弁護士。
日米双方向の進出を総合支援するコンサルティング会社の代表取締役と、日本の渉外弁護士事務所の代表の「二足の草鞋」で前進する、異色の弁護士 小野智博先生に、中国企業との提携をはじめとする、企業の海外進出に際してのリーガルリスクに関するお話をお聴きした

あわわの師さん本日は、大変ご多忙なところ、事務所にお邪魔して申し訳ありません。
よろしくお願い致します。

小野弁護士:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

21世紀型の法曹

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所

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あわわの師さんまず、海外のお話をお伺いする前に、先生のご経歴に関してのお話を、少しお聞かせください。
ご経歴を拝見して参りましたが、先生は、まず行政書士で、法務のご経験を積まれ、その後、法科大学院に入られておられますね。
旧司法試験時代には、あまり考えられなかったご経歴ですよね?
従来の弁護士は、大学を出て司法試験の受験勉強だけを予備校や研究団体に籠って行い、合格後には司法研修をえて、弁護士登録をされた方が殆どでしたよね。
先生のように、一度、行政書士という、「食べるのに大変な資格士業」で顧客である企業や外国人に向き合い、その後、法科大学院に入りなおして、司法試験を合格され、渉外弁護士になられた方は、かなり珍しいのではないかと思います。
まさに、「日本の司法改革が求めた人材」のようにお見受けします。

小野弁護士:ありがとうございます。
確かに、私が行政書士として実務を積んだ時代は、行政書士で独立してやっていた方は、少数派でした。
その意味で、真剣に顧客に向き合わなければならなかったわけです。

ところが、弁護士法との関係で、やはり行政書士には、業務の限界があります。
そうなると、仕事を中途で、顧客を弁護士に振らなければなりません。
最後まで、しっかり自分でお客様に向き合うため、弁護士を目指したのです。

あわわの師さん先生が行政書士時代にやられていた外国人のビザ申請業務は、その後、渉外弁護士として進まれたことに繋がっておられますね。

小野弁護士:まさにその通りです。

あわわの師さんこんなことを申し上げてはなんですが、日本の渉外弁護士は、英語ができる弁護士資格者が、アメリカのロースクールのLLMで、アメリカの弁護士資格を「拍付け」してきた方が殆どですよね。言ってみれば、アメリカでは一度も法廷に立ったことがないのに、日本では、アメリカ合衆国ニューヨーク州弁護士として通用しています。それで、殆どは、大企業相手の仕事を、高額な報酬で当然のようにされています。
私が見るところ、中小企業のビジネスの論理を理解されて、顧客目線に立っている方は、渉外弁護士には、殆どおられません。そういった意味で、小野先生のような方は、中小企業の海外進出にとっては、とても貴重な専門家ではないかと思います。

小野弁護士:今、私の仕事は、8割が日本の地方の中小企業からの海外進出の仕事です。
残り2割が、アメリカから日本に進出する企業のインバウンドの仕事です。
地方では、海外進出の渉外法務を専門とする弁護士は殆どおられません。一方で、東京の渉外事務所は、大企業しか、価格的にお客にはなりません。

あわわの師さんなるほど。
やはり、そういった意味で、小野先生は、中小企業にとって、とても頼りになる「異色の弁護士」ですね。

中国企業の「今」

あわわの師さんさて、お話を今日の本題の、中国のお話に進めたいと思います。
先生は、主にアメリカ企業やアメリカ進出を専門にされておられますが、中国との法務も扱われますか?

小野弁護士:はい、扱います。

日本企業・アメリカ企業の関係で、中国との法務は避けて通れません。日本やアメリカのメーカーが中国に製造を委託するケースが代表的な事例です。例えば契約トラブルになった場合、日米中の三か国での和解や、中国企業と日本企業の和解を中立の第三国であるシンガポールで行うなど、現在の渉外法務は、非常にグローバルです。

私も、信頼できる各国のパートナー弁護士と連携し、国際的な和解や仲裁、そして訴訟や強制執行を扱っています。

あわわの師さん先生からご覧になって、現在の中国企業は、「世界の工場」時代の中国企業と変わりましたか?

小野弁護士:洗練された企業や企業経営者が増えてきましたね。
まさに、アメリカのシリコンバレーにいる事業家に、近い経営者が増えてきたと思います。

あわわの師さん中国のどのエリアにそれが目立ちますか?

小野弁護士:やはり圧倒的に深圳です。
まさに、深圳は、スタートアップの聖地ですね。

あわわの師さんやはりそうですよね。

小野弁護士:ただ、一方で、模倣が多いというのは、依然変わりません。
中国は、知的財産権の出願件数も巨大ですが、模倣数も巨大です。知財大国であり、かつ模倣大国でもありますね。

中国企業との提携での注意点

あわわの師さんなるほど。
では、次に、日本企業が中国企業と提携する場合、法務面での注意点をお教えください。

小野弁護士:まず、何と言っても商標です。

例えば、日本企業がライセンスを中国企業に提供するとします。
数年後、契約で事業譲渡に承諾を必要とする条項があるにもかかわらず、中国企業が勝手に第三者の中国企業に事業譲渡をしてしまう。
そして、譲渡を受けた第三者の企業が、日本企業の商標と非常に似たような商標で営業を開始してしまうなどのような事例です。

あわわの師さん事業譲渡に承諾を要する契約書は、契約の当事者しか拘束しませんから、第三者が出てくると、厄介ですね。

小野弁護士:このような模倣は、商品名・屋号・企業名など、すべての領域で行われます。
従って、日本企業としては、進出にあたり、使用するすべてのブランドに対する総合的な商標取得戦略を立てなければなりません。

穴があると、そこを突かれます。

更に紛争で次に多いのは、発注側と受注側での、品質基準の相違です。
基本契約を締結し、個別の取り決めを協議で流しがちな日本企業が、納品後、商品の基準や品質の基準が事前の話と異なり、揉めるケースが多いです。
これも、しっかりと、個別に契約で品質基準と検査基準を合意しておく必要があります。

あわわの師さん日本の中小企業の場合、国内では、印紙の節約などの観点から、個別契約書を締結せずに発注書などで済ませるケースが多いですからね。
そういった感覚で、中国企業と提携してしまうと、「そんなはずではなかった」という問題が後で起きてしまうということですね。
それと、入金の問題、つまり回収の問題などは、いかがでしょうか?

小野弁護士:そう、それもありますね。
特にトラブルが起きると、滞ることが多くなります。

中国の場合でいえば、このような時は、返済合意書を作成して、公証を受けておく方法がよいですね。
そうすれば、強制執行が可能となります。

あわわの師さんありがとうございました。
中国企業は、非常に変わってきており、日本企業としては、今後、益々重要なビジネスパートナーになるでしょう。一方では、きちんとリスクに備えた事前の対応を行い、リーガルリスクが顕在化しないようにしていくことで、紛争を事前に予防することが重要ですね。
本日は、ご多忙の中、ありがとうございました。

小野弁護士:こちらこそ、ありがとうございました。

【インタビューを終えて】

企業の目線にたつという「当たり前」の、新しさ

これまで、数多くの弁護士と仕事をしてきた。しかし、いつも思うことがある。弁護士は、基本的に、クライアントである企業やその経営者を「馬鹿にしている」と感じる。

単位弁護士会の役職についている高齢の弁護士などからは、その雰囲気が「ぷんぷん」感じられる。

彼らのプライドは、法律実務を知り尽くしているための自信ではない。司法試験という難関を、合格してきたという過去の事実だけが、そのプライドの基礎を支えているのだ。

しかし、顧客である経営者から観れば、弁護士も一つの「業者」に過ぎない。経営者は、単に、司法試験予備校で身に着けてきた法律の知識など、価値があるとは全く思っていないのだ。そのギャップが、司法試験改革を含む司法改革を生んだ。

小野弁護士は、司法改革が生み出した、21世紀型の弁護士だと感じた。私は、小野弁護士の話を聞いて、はじめて、「司法改革というのは意義があったのだなあ」と実感した。

自らもアメリカに、日米の進出を支援するコンサルティング会社を創り、日本の渉外弁護士と二足の草鞋を履く。

そこから生まれてくるアドバイスは、企業の活動をよく知り尽くした、適切かつ中身の濃いものだった。

顧客である企業と自らも同位置に立って思考しているという「当たり前」のことができる、「新しい弁護士」は、中小企業が外国企業と互角に渡り歩くときの、強き味方になるだろう。

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 コーポレートサイトURL

http://pm-lawyer.com

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