建物を、テーマパークのようにドラマチックに演出する、モルタルアートの造形企業

株式会社モルタルアート
読者の皆様は、テーマパークのアトラクションでドラマチックに創られた造形を観たことがあるだろう。あれが、モルタルアートと呼ばれる造形技術だ。
このモルタルアートの専門企業として創業から20年。様々な、公共施設・テーマパーク・動物園・建物のリノベーションなどの造形で、私たちの目を楽しませてくれた企業。その名もずばり、株式会社モルタルアート。
隠れた技術者集団の企業だ。
そして、代表取締役の椎木長利社長が、会社設立20年目にあたる今年、このモルタルアートの更なる普及を目指して、一般社団法人日本モルタルアート協会を立ち上げた。
その夢の世界の造形にかける想いを伺うため、埼玉県狭山市にある、モルタルアートの工場に、椎木長利社長を訪問した。

あわわの師さん本日は、西武線の入曽駅近くにある、株式会社モルタルアートの工場にお邪魔しました。椎木社長が、「ポルシェ」と自称する小型車で、駅までお迎えに来ていただきました!
ありがとうございます。

椎木社長:いえいえ。こちらのほうこそ、遠くまで取材にお越しいただき、ありがとうございます。

モルタルアートとの出会いと、その特徴

あわわの師さんさて、私、この度、インタビューをさせていただくにあたり、御社のホームページでモルタルアートの作品を拝見して参りました。拝見して気づいたのですが、おそらく、私を含む多くの人が、モルタルアートの作品を、これまでに見たこと、あるはずですね。
例えば、有名リゾートの温泉の造形。動物園の動物のいる岩場。テーマパークのアトラクションの中の造形風景。
あれ、みんな、モルタルアートだったんですね?

椎木社長:そうなんです。

あわわの師さんまず、椎木社長が株式会社モルタルアートを設立されたのは、35歳の平成11年とお聞きしました。椎木社長がモルタルアートと出会われたきっかけを教えてください。

椎木社長:はい。私が25歳の時、名古屋のレース用のヨットのパテを磨くバイトをしたんです。これ、物凄くきつい仕事だったんですが、そこのボスが特殊造形物の仕事をしていて、その方との関係で、その仕事に出会いました。

その後、10年をえて、株式会社モルタルアートを開業し、その仕事を専門にするようになったのです。

あわわの師さんなるほど。モルタルアートというのは、その他の材料で造形を作る場合と比較して、どのような特徴があるのですか?

椎木社長:まず、「不燃」という性格が特徴でしょう。そして、外装にも内装にも利用できるというメリットがあります。

あわわの師さんモルタルは、職人さんの立場からは、扱いが、難しい材料なのでしょうか?

椎木社長:難しいと思います。造形用セメントですから、タイミングを間違えると、クラックが発生してしまいます。ホイップが固まるときに、手をタイミングよく入れるなど、独特のコツがありますね。

あわわの師さん職人さんが一人前になるには、どのくらいの修行が必要になるのでしょうか?

椎木社長:人によって異なりますね。ただ、平均すると、プロとして通用するには、3年程度はかかります。

あわわの師さんなるほど。決して、誰でも職人になれるわけではなさそうですね。

ビジネスとしてのモルタルアート

あわわの師さん次に、モルタルアートをビジネスとしてみた場合、どのようなことが大切なのでしょうか?椎木社長は、20年、モルタルアートのビジネスを続けてこられておられますので、どのようなお気持ちで、取り組まれてこられたのですか?

椎木社長:まず、モルタルアートって、世の中になくてもよいものなんです。

あわわの師さんあれあれ。そう言われちゃうのですか?

椎木社長:だからこそ、それにお金を払っていただくには、それに見合うだけのストーリーがいるんです。

例えば、石が積まれている造形の中に、あえて、穴をあけます。そこに、兎が出入りするようになる。兎が顔を覗かせるような、イメージを観る人に与える、といったストーリーとかね。

セメントと砂を水で混ぜた建材料に、物語性を持たせ、様々な想像を見る人に膨らむようにさせる。
岩場の中に、ポンとアンモナイトを入れる。
マンションのエントランスに、アンコールワットの巨大な石像の顔を出現させる。
店の入り口をホビットの家のように演出する。

こんな、ストーリー性をもたせ、ドラマを造形に持たせることで、見る人を楽しませることにより、付加価値が加わり、利益をいただけるようになります。

セミナーを何故、実施されているのか?

あわわの師さん実に面白いですね。
さて、では、別の質問をさせていただきますね。
御社の顧客は、国土交通省の官庁から、動物園やテーマパーク、不動産デベロッパーなど、かなり大規模な施工をされる顧客層ですよね。

椎木社長:はい。
本当は、もっと細かい仕事もしたいのですが、今は、職人の数に対して、受注依頼が多すぎ、細かい仕事をお断りしているような次第です。

あわわの師さんそれで、一方、御社は、個人向けに、モルタルアート体験教室を実施されていますね。これは、どのような狙いなのでしょうか?

椎木社長:「モルタルアートを多くの方に知ってもらいたい」ということでやっています。

あわわの師さん失礼ですが、利益はとれているんでしょうか?

椎木社長:実は、これは赤字です(笑)。
実はね。僕、モルタルアートのほかに、もう一つ、バーベキュー協会の中級インストラクターという資格を持っていましてね。

あわわの師さんえ?バーベキューの資格ですか?(汗)

椎木社長:僕たちから見ますとね。河原でやっているあれね。あれは、バーベキューじゃないの。バーベキュー「パーティ」って、位置付けているのが、本当のバーベキューです。

食材も、バーベキューをやる前の日に、岬のマグロだとか、パエリアだとか、塩釜で鳥の丸焼きを作るとかを想定して仕入れます。徹底的に準備するわけです。

僕の友人で間伐材の活用の活動をしている人がいてね。それでブランク料理を作るんですよ。

あわわの師さんはあ・・・(汗)。(確か、今日はモルタルアートのインタビューだったよな)

椎木社長:で、このバーベキューパーティを、モルタルアートのセミナーにセットにしちゃったんです。モルタルアートは、乾燥させるために時間がかかるんで、そのタイミングで、バーベキューパーティを入れるんです。

あわわの師さんえっ?
もしかして、モルタルアートのセミナーに来たら、バーベキューパーティで食べられちゃうんですか?

椎木社長:今はもう、やめちゃったんですよ。

だって、これやると、受講者の興味が、バーベキュー9対モルタルアート1になっちゃうんだよね。それにね、何故か、セミナーやる前の日、一日かけて、バーベキューの食材の買い出しに行って、そのあと片づけに半日かかるしね。「俺、何やってるんだろう」って、おもっちゃう。

あわわの師さん(爆笑)

椎木社長:でもね。僕は、50歳を過ぎたときから、決めたんです。人生楽しいことしかしない、とね。

その楽しいことの一つが、モルタルアートで、もう一つがバーベキューパーティです。

これから先の夢

あわわの師さん最後に、椎木社長の、これから先の夢についてお聞かせください。

椎木社長:はい。今、ちょうど設立している、モルタルアート協会ですね。

これは、モルタルアートのプロの育成のための協会です。僕は、この協会の仲間と、技術や知識を共有し、もっとモルタルアートを広げていきたいと思っています。うちの会社が利益をはねるための仕組みではなく、技術を広げるための仕組みです。

あわわの師さんつまり、モルタルアートの技術の承継ですね。

椎木社長:はい。モルタルアートは、溶接・左官・エージング塗装と多様な工程があり、限られた人数で仕事を請けるには大変です。今、最も若い人では、20歳の職人も参加してくれました。
こういう層をもっともっと増やしていくためには、株式会社ではなく、協会組織が必要です。
これで、モルタルアートをもっともっと広げていきたい。利益は、そのあとでついてくるものだと思っています。

あわわの師さん素晴らしい!
今日は、どうもありがとうございました。

【インタビューを終えて】

世の中に必要ないものだからこそ、ストーリーと夢が必要。

兎に角、とても楽しいインタビューだった。

インタビューをしていて、私が爆笑をしたのは、はじめてだった。バリトンの声調で、テンポよく話される椎木社長は、ヒトを飽きさせない話術の魅力をお持ちだ。

「受講者の興味が、バーベキュー9対モルタルアート1になっちゃう」という椎木社長の話に爆笑しながら、私は、その両者の共通性に気づいていた。

モルタルアートは、観るものに夢を与えるが、その造作過程は、過酷なものだと思う。細かいクラックを演出し、細部に精神を集中する。観るものが気づかないところにまで、心配りをし、拘ることで、はじめて、それが「アート」と呼べるレベルになりえるものだ。

夢を見ることよりも、夢を形にすることのほうが、ずっと困難で、根気のいる仕事なのだ。

そして、一方、バーベキューパーティという、もう一つの椎木社長のライフワークも、これと同じだ。食べて楽しむ人は気づかない、細部に拘り、調達と仕込みを施す。

おそらく、モルタルアートと、バーベキューパーティに共通する、「夢を観る素人が気づかない細部を演出する」という「芸術家」の行動が、椎木社長の言われる「50歳を過ぎてから楽しいこと以外したくない」、その楽しいことなのに違いない。

我々、アーティストでない凡人には、とても想像できない細部へのこだわりを施して、そして、我々凡人を楽しませる、ということが、椎木社長のライフワークなのだろう。

「世の中に必要のない」アートというものを売る、これがマーケティングの神髄だと私は感じた。

これは、そう簡単に、真似ができるものではない。まさに、参入障壁の高い、ブルーオーシャンのマーケットだ。だからこそ、椎木社長の会社には、断らなければならないほどの依頼が舞い込んできているのだ。

そして、椎木社長の今後の挑戦は、この困難な仕事の同志を、協会という枠の中で、発掘し、育成するということだ。

是非、我々凡人が、今後もテーマパークや動物園で、驚き楽しみ続けるために、椎木社長の挑戦の成功を祈りたい。

株式会社モルタルアート サイトURL

https://www.morutaruart.com

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