ベーカリー業界の専門新聞「パンニュース」に講演内容が掲載されました(2018年7月15日号)

ベーカリー業界の専門新聞「パンニュース」2018年7月15日号に、株式会社ダイユーが主催する、ベーカリー経営者団体NexStarsの第2回講演会(2018年5月28日)で、「辻説法かわら版」を運営する、株式会社URVプランニングサポーターズの代表取締役社長 兼 エグゼクティブコンサルタントの松本 尚典が講演をした内容が掲載されました。

▶パンニュース社
http://www.pannews.co.jp
▶株式会社ダイユー:老舗ベーカリーコンサル会社が出した、女性役員陣への事業承継の結論
https://www.tsuziseppou.com/doc-008/

ダイユー 第2回ネクスターズ

ベーカリーの「事業承継」をテーマに

ダイユー主催の第2回NexStars(ネクスターズ)が5月28日、東京・永田町の全国町村会館で開催された。今回はリテイルベーカリーの関心事の一つ「事業承継」がテーマ。URVプランニングサポーターズ代表取締役社長で、ダイユーの経営顧問を務める松本尚典氏が約2時間にわたり講演。終了後に懇親会(相談会)も行われた。松本氏は、ダイユー型ベーカリーについて分析した後、ベーカリー事業承継のメリット、デメリットや借入金の個人保証をスムースに納得してもらうポイントなどを分かりやすく話した。

飲食業界全体から見た近未来ベーカリー
〜企業永続のための戦略的事業承継〜
松本尚典氏

 企業経営には第一段階の創る(創業)に始まり、次に企業を発展させる、そして企業を継続させるという3段階がある。「創る」ことよりも「発展させる」ことは難しいし、「継続させる」ことはなお難しい。

 税務当局のショッキングなデータによると、日本で長く生き残る事業者(個人事業主を含む)は極めて少ない。10年残るのは6%、20年残るのは0.3%、30年残るのは0.025%(1万社のうち2〜3社)でしかない。

 もう一つ中小企業白書のデータによると、全産業の中で飲食業は飛びぬけて開業率、廃業率が高い。ベーカリーもそうだが飲食業は、競争が激しく勝ち組と負け組がはっきりしている。

 とはいいながら、飲食業は魅力的な業種であって、新規参入が後を絶たない。飲食業は不況の時も縮まないし、どんなに景気が悪くても人は食べないわけにいかないからだ。

 では飲食業生き残りの鉄則とは何か。よく顧客満足度を高めることが目的といわれ、そのためにお客にアンケートして分析することが多いが、星野リゾートではアンケートをしていない。その理由は「お客にアンケートしても平均的なことしか出てこない。平均的なことを追求しても成功できない」からだ。

 全ての顧客を満足させるのではなく、大好きという顧客をつくること。そのために必要なのは「驚愕」の構築だ。顧客を驚かせて感動を与え、競合を愕然とさせる商品、サービスでなければ、長期的なリピートにつながらない。競合店からとても真似できない、といわせなければ激しい競争を勝ち抜けない。

 実はダイユー型ベーカリーは、すでに「驚愕」の店づくりを行っていた。郊外型大型店、地域における口コミ戦略、多品種少量生産によるできたての提供、飽きさせない商品開発、低売価・低客単価などで地域一番店をつくってきた。そこには長時間労働などの側面もあるが、ネクスターズにはベーカリーの勝ち組が集まっている。

 ところでベーカリーが勝ち続けるには、視野を広げ長いスパンで競合の全体を見なければならない。ポーターの競争戦略論のファイブフォース分析から考えれば、例えば、パンの代替品のコメの存在は大きな競合といえる。提携したJAと神明は、学校給食が米飯中心となった今こそ、コメ消費拡大のチャンスと捉え、国内はもちろん海外での動きも活発だ。異業種からの脅威も迫る。ローソンは、4月に「まちかど厨房」を導入し店内調理によりカツサンドなどの調理パンを戦略商品として打ち出してきた。競合を考える場合、隣にできた同業他社だけを意識していたのでは、重要な競合の出現を見逃してしまう。

 ダイユー型ベーカリーは今後の戦略として①店舗デザインのマイナーチェンジによるリニューアル②競合に勝つ差別化③海外戦略④販売員の再教育⑤営業時間と顧客層の見直し⑥常に「驚愕」の商品提供__が必要だと思う。

 事業承継の選択肢は①息子や娘をはじめとする親族への承継②従業員(役員、店長など)への承継③第三者への承継__の3パターンで、それぞれメリット、デメリットがある。事業承継する世代の経営者の力を使い、変えてはいけないものは変えずにさらに強くする。そこが難しい。

 日本では事業承継は必ずしもうまくいっていない。黒字廃業が激増していて全体の50.5%を占める。経営者の高齢化も進み、トップが60歳以上の企業が73.8%と多い。つまり後継者がいないから承継できない。

 黒字廃業は経営戦略的な良い行動ではない。赤字廃業なら雇用整理ができるし再生も可能だが、黒字で廃業となると、債権者への支払い、退職金の支払いそして所得税、法人税の負担も出てくる。廃業ではなく、企業は継続を選択できるように準備を進めることが重要だ。

皆さんはおそらく息子や娘など親族への承継中心に考えていると思うが、これなら対価のやりとりはなく、相続や贈与の形で譲れるメリットがある。現場経験を積ませる中で、従業員の納得を得やすいし、承継後に親子で代表取締役をできることも大きい。

 デメリットは親と息子や娘の考え方の違いから対立を生むことで、従業員の反発やモチベーション低下につながる。親子が互いに認め合うと、不思議なことに従業員間の対立もなくなり、一体化できる。

 また、借入金の個人保証がしばしば問題となるが、基本的に借入金は悪ではないとの認識が必要。積極的に投資して事業を拡大するために必要なことと理解すべきだ。

 従業員への承継の場合、株式を買ってもらうことになるが、黒字の場合、株価を算定すると結構高い金額になる。それを支払えるか、金融機関から借り入れできるかという問題がある。

 第三者への承継に関しては、経営陣が入れ替えとなる可能性があり、経営者として影響力を残せるかどうか分からない。第三者の企業の傘下に入るメリットを享受できると同時にデメリットも避けられない。従業員の処遇、給与はどうなるのか、場合によっては転売されるかもしれない。

 M&Aについて若干触れると、売却企業1に対し買収企業8というのが現状。日本では仲介会社が主力だが、アメリカでは日本のような仲介会社ではなく、売却側と買収側にアドバイザリーが付く形態でないとコンプライアンス違反となる。もし、M&Aを選択するのであれば、仲介会社の営業に乗るのではなく、準備をきちんとしてから行動に移すべきだ。

 M&Aにおいては、買い側は、直近3年間の業績を評価する。もし売却するのであれば3年かけて高く売るために会社を改造していくことを勧めたい。

 事業承継には個人承継以外に、会社を社会の公器にする上場という方法がある。上場は決して夢の世界の話ではない。年商10億円以上の企業から射程内に入る。上場するとコンプライアンスやディスクロージャーにコストが掛かる。今や飲食業は人手不足で資金調達よりも人の採用に苦労しているが、上場企業と非上場企業ではかなり差がある。上場の一番のメリットは何よりも人材を確保できることだと思う。

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